中身充実の領地再生奮闘物語。
新領主からのヒロインに対する誤解の解消は早期にあって、後は次第に互いを認め合って、いい仲に。
橋本先生は硬軟どちらも行ける実力者、最後まで増頁を活かしきって楽しませた。
産業革命も、児童労働や劣悪な工場労働者の環境と背中合わせなのは何かで読んだが、日本某市も東洋のマンチェスターなどという呼び名を自慢していいのかなんなのか。手工業主の倒産や、都市部へ人が流入しての農民の農地放置など、社会派になりそうな題材を、手際よく恋愛の味付けの読み物に変えた。良い統率力を備えた土地所有者の側面で、近代化夜明けの姿を、領地経営と工場などへの投資、また社会インフラとしての教育投資と、実は盛り沢山。先見性を持つ「リーダー」(管理人だろうと領主様だろうと、また「貴族」と雖も、推進者は必要という意味)の頑張り鮮やかに。
ロマンスもうまく料理されていて、やっぱり先生の手腕は確かだ。
最後はヒロインの判断にお任せだけれど、男爵サマは出来る手を打って。
出戻り方がちょっとベタで、臭さもあるにはあったが、これもお約束ごとのひとつの手仕舞かた。先日読んだ「国王陛下の花嫁選び」を少し彷彿の、ミュージカル仕立てでコミカルに結末を賑やかに締めくくっており、明るい農村経営ドラマを見届けた。
やっぱり絵の達者な先生じゃないとHQは駄目。村の光景、町の光景がありあり。
モミアゲ少々ある男性なのに、スマートで洗練された空気も持ち合わせるのは、先生のHQならでは。
26頁81頁の花と星も私は大歓迎なのだ。
デイビーが、レミゼのガブローシュにならずに良かった!ホッとした。