自分の力で生きていこうというヒロインホリーの意志の固さは十分に伝わる物語でしたが、伏せている事実と、見せている事実の兼ね合いが、都合よすぎて落胆してしまった。前半部分でのヒロインは、美術専攻で、企業経営一家のその一部の担い手としての価値をゼロであると家族は決めつけ、彼女の希望を無視し経営に縛り付けようとし 反抗した彼女を父親は勘当し、7年という日々を孤独にそして自力で頑張った。その中に5万ドル出資した男性に持ち逃げされるという 失敗行動の布石を用意しているわけです。また、作中ではこれらの背景を上流社交界という枠組みで説明しており、彼女はそこに線引きして、自分自身でふさわしくないとレッテルを張り話しの目線を少しずらされてしまって気持ちが悪い。一方でヒーローエリックは、男としての基準を父親においていて、そこには強い母と優しい父という構図ではあっても、行内では牛耳る妻と媚びる夫との周りの評価に 反面教師と位置付け、そのせいで母が正しいと自分の希望をねじ伏せてきたという背景が、強い男の意味を勘違いしていることに気付かない。えっそうだったのか との種明かしで2人の未来の希望が見える部分が、今更そういうことにしちゃうんだ という好都合設定が出てきて、冒頭の落胆の原因。ヒーローは牙剥く座敷犬、ヒロインは爪を隠す鷹としたいようで。私は強いヒロインが好きなので、ホリーのように一見華奢に見えても芯が強く一途なところは好感触なのですが、ヒーローがいけない。読み進めるごとに意志や考えを押さえ込み一歩下がるように見えてくる。そこに熟考の要素でもあれば納得もするのだけれどそれは無い。相手の反応待ち姿勢に見えてときめかない。それでもエンディングに向けて立ち向かう姿勢は見せてくれても ホリーの本来の彼女の種明かしの前には影薄く残念な男性に見えてくるのだ。