終始不愉快な口をきいてくる相手に身体の関係、というのが先ずわからない。ヒロインはただの(いっときの甘い雰囲気にほだされ、)流され人間なだけに思えてしまう。
どの顔して妊娠初期付きまとう(彼)のかも理解できにくい。何しろ当初中絶が念頭にあった。顔なんか出せず、陰ながらの金銭援助がせいぜいと思えるが。
HQのバックグラウンド的思想から中絶は悪、もあるが、お話の作り手によってストーリーは、結果として、変わらぬ展開に行くだけ。その間に彼の優しい面を知る、という趣向の筋立ても、誰の子かと言った人間をプラス評価し始める、ヒロインの心情の推移がわからない。自分の子でなくとも、妊婦に優しい、というのは世間一般普通にあることだから、ヒロインが彼のことを見直すも何もないことのように思える。
HQあるあるの悪い女とのヒロインに対する誤解や、財産をやらないとの宣言も、しつこすぎて私はヒロインの身に成り代わり、悔しさこの上無い。
彼の気づきが(気付いてからその後は愕然とした、ということはあっても、勝手にそこで悔やんで下さいって感じ)イージー過ぎで、蔑まれた側のこれまでに対して比重が軽い。
欧米の女性は、罵られる事に耐性があるのだろうか。
自分はさておいて他人をとやかく言う、という人間が居ると言うのは万国共通だが。
彼アリッサンドルが、見た目子どもで、唐突に大袈裟な謝罪をするのが、私は、ソレ今さらなんなの、としらけてしまった。盛大に謝らせて溜飲を下げるところなのか?、私には、ドラマティックに持って行こうとした話の持ってきかたのいやらしさが、むしろ鼻についた。後から付け足し説明で、実はいつから気になってた、などというのも、余計、そうでしたかそれを今ごろ言われたところで感激するとでも? と私なら心の内でカチンと来て逆効果。
アリッサンドルってただのバカってだけなんじゃないの、と思えてしまうし、ヒロインのやってることにも共感しづらいグダグダを思ってしまうし、いとこも制裁になっていないしで、読み終わって久々に、高評価故に本作を選んだのに、という気分も。
グラツィアのポジションも不透明のまま。兄弟の結婚を歓迎していなかったアリッサンドルが、ヒロイン姉夫婦の不幸の一部を多少なりとも構成。親孝行もいいけれど、アリッサンドルが誘えるのか。母親ならともかくも。
面白いと思った方、ごめんなさい。