HQで初めて山本鹿乃子先生の作品を読んだとき、描かれる男性は好みのビジュアルだと思った。以来、先生の描かれるそんな男性を探しに、時々買うが、たまにしか期待する素敵さを表してはくれない。麗しいオーラや、スッとした所作を繰り出しそうな上品さなどが、他の作品では漂っているのがあるのに。
けれど、本作は世話好きな面を見せるキャラ、そこに涼しい顔立ちは話にそぐわないのかもしれない。
一方、先生の描かれた女性の中で、本作品ほど、全体的に幼稚な印象を持ったことはなかった。粗い感じもする。十代設定なのだろうか? HQにはもう少し大人の女性が登場して欲しいものだ。ビジュアルだけではない。ムキになって毛が逆立ってるかの冒頭は、生きてきた世界の小ささと同根の了見の狭さ、彼の提案に乗りコロッと彼に対する見方を改める心境変化さえ、幼さに通じてしまうように感じる。
翻って背景の絵は良かった。ピンきりのHQコミックで、人物以外真っ白けというのはよくあって、私は高い価格設定に見合わないと感じることがままある。漫画として魅力がなければ、小説だけ読めばいいのであり、わざわざ漫画の方を買う意味はない。HQコミックは単なるダイジェスト版などではなく、小説の語りに飾りとして厚みを持たされていた部分を削ぎ落とし、コミカライズご担当者としての視点が加わること、整理のための場面の切り取りが行われた提示方法にセンスが投影された物であることを期待する。登場人物の後ろをただ埋めてるだけではなく、どこなのか、またはどんな角度なのか、どういう心境なのか、が伝わるような、アーティスティックなところを求めている。
本作はそこが、どんな空気感であるか伝わって来て素晴らしい。
ストーリーは、予め粗筋に説明された設定を素直にハピエンというお約束まで、そこそこ真っ直ぐに進む。
但し転回部の入り方は急転のし過ぎかと。繋ぎ方がもっと自然だったら、と思う。彼の苦悩が本人は深刻なはずなのに、彼視点描写も多いのに上滑りしたかな、と思った。
いかんせん、兎に角ヒロインの幼い見た目が気になってしまい、これは一人で子育ては無謀だと、冒頭の意固地さが逆に危なっかしく、一個の人としての人間的魅力不足と思った。経済援助受けます、でも接触は要りません、では通る理屈ではない。相手の資質を問う場面、彼女が休んでいる仕事の言及なかったが、社会生活へ適応を疑ってしまう。