気持ちは、頭では割りきれないよね、というところを示していたかと。
名家や金持ちというものは、女とは、遊ぶ相手と結婚の対象と分けて考えることが多いわけで、しかし、好きになってしまえば予定なんて飛んでしまう。若いときに遊んで、結婚は落ち着くときに落ち着こう、などというもくろみは、本当に好きな女を見つけたら、其迄頭で考えていたことなんて、もう意味がないのだ。
私が十代の頃まで、十代の望まぬ妊娠は深刻な社会問題で、相手の男性の不誠実さは、世の東西を問わずそれはひどいものだった。欧米フリーセッXス観ほど日本は乱れていなかったが、家が産婦人科の友人の親が、中絶に来る少女達の実態について心から憂慮していたものだ。
この話、相手は責任をとるつもりだったわけで、金持ち的な手切れ金などで片付けるつもりでもなかった話なのだから、そこまで責められる話とは、私は思っていない。
図らずも再会の引導を渡すことになった幼馴染、かっこよくて好意も寄せてくれたのに、惜しいよね、と思うが、身近で幾らアピールしてくれても心は誰のものか、もう決まっていたわけで、恋愛は頭では出来ないから、というところ、しっかり示されていた。幼馴染クンは外交官、皮肉にもかねてヒロインのやりたかったことを今やっている訳で、その上、外務省に来ないかと勧めるも、ヒロインがベンと共に居きる喜びのために夢を置いてきてしまっていて。外務省役人故にギリシャ大使館に繋がる訳だし。その気心知れてる彼にすればいいものを、と端では思っても、人間そこは割り切れない、という状況、恋愛とは、理屈では簡単には切り替えられないと語る所で、はたがああすればこうすればを言ってもなにも始まらない。
放たれる言葉の激しさも、御曹司あるあるの範囲に滅茶苦茶逸脱というほどでもあるまい。
ヒロインの、双子再度の出産に関し彼女の「控え」「予備」発言は仰け反った。
さてストーリーに憤るレビューアーさんの多さに驚く位、私はこれもひとつのお話として受け止めている。
兎に角、絵はよく描けていて素晴らしい。
特に外の景色、筆運びがいい。
家の中の光景も味わいがあるタッチで手抜き感がない。
HQコミックスは雑な絵でがっかりすることがあるが、山田先生は多分相当じっくり取り組んだことが伺える渾身のコマが多かった。
人物はクセがあるが、気にはならない。寧ろ画風なのだろうと理解した。