贅沢は居心地が悪いという。好感度高い人物が男性ホルモンの塊のオーラ・容姿・自信も備えてヒロインは陥落寸前だけれど踏み出せない。彼の方から来るのはもっと駄目。
互いに相手を欲しているのに越えられない壁を、彼がヒロインを安心させるよう最大限の配慮のもとに、彼女のために自分の欲望を出来る限り封じた。相手の欲望を優先させ己は相手のなすがままに。
エロティックに描かれていると生々しかっただろうが、逆に絵柄に少しドロドロネトネトがないのが、ヒロインの克服に主眼が行って良かった。
経緯もオークション起点のきっかけも、お姉さんの発想も、旅行付という企画も、何より、こういう男性の存在、人物造形自体も、実現(出現)可能性を考えると正に無理無理設定でしかないが、ストーリーの展開がこれらの前提を所与であると飲みこんでしまうと、HQのご都合結末はヒロインを彼が救えたというただ一点だけで、奇跡の存在に感動する話。
ただ、なんだかんだヒロインの境遇設定に乗じて、性的描写を挟む趣向には、結局読者の興味をそちらで煽るような作者の意図があるように思えて、ストーリーの為ではないような微妙な印象。
一ヶ所だけ、21頁ひとコマめの「主人ですって!?」のところ、唐突過ぎて製作途中の調整が中途半端になってないかと違和感。流れが悪くなって詰まった感じがする。
絵は好みが分かれると思うので試し読みで事前検討したらいいと思う。
私は取引きって見える箇所が難しい関係の進行と、ヒロインの葛藤と恐怖心などを表すのに、むしろ効果的に働いたかもしれないな、と思った。