読者層が限定されるHQ出身のストーリーですが、一般の作品と何ら変わりません。愛もあるが正義と冒険と神秘、抑圧に負けない心、立ち上がる勇気に、団結にと盛りだくさん。そして、小さなことでも始めることの大切さ、無力を理由に諦めずに進む強さ、守るものができた人間の逞しさ。
人が、愛する者には、生きていてくれさえすればいいという究極の気持ち、でも、また傍に行きたいから生き延びてもう一度という気持ち、そばにいるだけで嬉しい、そうした、ロマンス要素もHQ ですから標準装備です。
丁寧に描かれてあり、城、戦い、登場人物の多さなど緊迫の場面も空気が出てます。
神秘の描かれ方も、二人の愛が溢れる場面も、とても夢があります。
典型に頻出のHQあるある要素抜きで、恋愛模様の甘ったるさを「脇役」にして、ストーリーとしての構造を手堅く組み立て。その上に、綺麗な絵柄で創造力も表れているのは素晴らしいと感じています。らしからぬ展開でも、愛を自覚して使命のためにお互いが感情をおしとどめあう中でのヒロインのドキドキが含まれていることも安心です。
長いけれど、無駄なコマは感じられません。
欲を言えば、自然の描写、国の山河にも、読み手のこちらまでその中に紛れ込んだような、ちょっと強い土地柄が出るともっと酔えたかもしれません。でも、それは、欲張りでしょう。
ファンタジーが、ストーリーのなかで、単なるHQの色付け程度に添えられたというレベルじゃなく、きちんと込められているところが作品の面白さを別ステージに引き出してまとまって四冊ひとシリーズものの読みごたえとなりました。