ジゴロ登場はこの類のロマンスコミックでかつて読んだ。本作品とかなり似た設定だったが全く別作家の絵だった。
既視感以上に相変わらず彼の人柄で勝負がつきやすいということを強く思った。部分部分の描写に、泥まみれもいとわない彼の根性が、ただ楽をして生きてきたイージーな人間ではないことを示す仕掛けがあるので、彼の生き方に読者としてはやむにやまれぬものを少し認めることになる。また、彼女を前にして過去を恥じるくだりも、話の流れとしてこの彼がヒロインの相手として、読者の立場的に過去は過去の事として受け入れる気持ちの形成の土壌となった。
ヒロインの、強い意思がある生き方に好感。
欲しいものに突き進むヒロインを魅力に思う彼はヒロインの理解者として申し分がない。
ただ、不思議もひとつ。
経済界にその名を知らない者のないという彼が、オークションで大金を持って競り落としに現れた女性たち誰一人として気づかれずにいたことを。人違いとしても写真から問い合わせひとつも入っておらず、まちがわれたままであったことを。また、壇上に登っても、ヒロインが落札できたこと。直前の登場者のことがあるにしても、だ。
恋がヒロインを変えたと言えるのかも知れないが、ストーリー前半の、彼が役目を引き受けてくれないかもしれないとの心配する姿と、後半の、彼を信じて待つ姿と、かなり変わったのでその点も結構驚かされる。