このレビューはネタバレを含みます▼
スティープウッド・アビー館の周辺の住人がおりなす恋愛模様を描いた8人の作家によるシリーズ8/16作目。
アビー館でサイウェル侯爵というロクでもない侯爵が死体となって発見され、その妻は殺される前から行方不明。犯人も不明という事件が起きているが、シリーズ物の宿命でこの事件はシリーズ最後まで解決されない。シリーズを追う気がない人は、その辺は噂話程度に流し読みするのが正解。
さて、本編。婚外子として貧しく慎ましやかな生活を母と二人送ってきたヒロイン。おそろしく美人で賢い彼女は母のために身分ある金持ちとの結婚を望んでロンドンへ。
一方、ヒーローは従兄弟に結婚相手を見極める手伝いをしてほしいと言われ、参加した舞踏会で従兄弟と共にヒロインと出会う。
過去の経験で玉の輿狙いの女性が許せないヒーローは、ヒロインの態度がまさにそれだと気づいて、最初からひどい態度をとる。これがヒーローが下手に頭がいいだけにかなり辛辣で意地が悪い。地の文でもヒーローが意地悪な見方ばかりするので、読んでて非常にイライラ。
ヒロインの玉の輿狙いもどうかとは思うのだが、まだ20歳で、これまで苦労してきたと思えばそんな夢を見てもおかしくはないし、他の女性たちもできれば…という思いはないと言えるのだろうか。
更にヒーロー従兄弟が純粋な若者ならともかく、30前後で愛人まで囲い、結婚相手は美人で資産がある方がいいと考えていたことを合わせると、どちらも考え方に大差なく、違いはそれを思う人物の性別と身分のあるなしだけなのに、ヒロインのことは責めて、従兄弟は責めないヒーロー。そういう時代だとも言えるが、非常にモヤモヤ気分で読み進んだ。
ヒーローの態度は、ヒロインと大差ない年齢の男がやるならまだしも30代に乗ってると思うと、10歳は年下の若い娘に過去の失敗の鬱憤をぶつけているようで好きになれなかった。
途中でヒーローがヒロインへの態度を反省したり落ち込む描写はあるが、ヒロインに代わって殴ってやりたいぐらいイラついたヒーローだった。
最後はハッピーエンドでよかったとは思ったが、ヒロインあっさり許しすぎじゃない?と思う部分も。結婚したらガッツリ尻に敷いてほしい。
今作に出るマダム・フェリスとアンメリング子爵マーカスの恋が16作目の『侯爵夫人の艶聞』で描かれるらしいのだが、電子化されてない模様。シリーズ完結作なのに何故だ。