このレビューはネタバレを含みます▼
誰もが知るような大手電機メーカーを性格が原因でやめざるを得なくなった主人公将孝、彼の仕事は特許申請という、また絶妙な角度で私のツボをつかれて購入してしまった。特許申請って!全然知らないし縁もないけど実は興味があった職業。やれるものならやってみたかった。
なんとなく、原田がおかしなエログッズ発明しておもしろおかしく展開されるのかなと勝手に想像していたのだけれど、全然違ってた。さすが烏城先生、きっちりまじめに地味な特許申請の話を熱く楽しく展開してくださった。小難しい単語がぽんぽん、よくわからない特許申請のなんたらを語られても苦痛ではなく、なぜかワクワクするのはなんでなんだろう。将孝も原田も仕事大好きで、特に原田は研究できれば他のことには無頓着といういかにもな天才肌。そういう原田の無頓着さを、彼の仕事っぷりに惚れ込んだ将孝が、プライドを持って弁理士という立場から支える。支えるという表現が正しいのかわからないけど、二人三脚というか、二人が今後もどんどんいい関係になるだろうことが想像できた。烏城先生の「許可証をください」シリーズもそうだけれど、縁の下の力持ち的職業に焦点あてて展開させるストーリーが魅力的。自分も縁の下の力持ちの末端の末端の末端ぐらいにはなれてるって思いたいから、こんなにはまるのかもな。
エロスについて言うと、そこまで派手にエロが表現されているわけでもないのに、妙にエロくてドキドキするシーンが何か所かあった。
実験と称して原田が将孝の体に筆で薬を塗るあたりのエピソードと、その薬の効果を確かめるとか言いながら将孝が原田にあちこち触られちゃうのなんかは妙にドキドキしたし、
原田が仕事のご褒美として将孝にキスをねだってからの二人の攻防的なものは楽しくて非常に私好み。「キスはキスだ」の言葉で結局丸め込まれてる将孝がおいしい。ホテルで、将孝がシャワーをあびて出てきてからの展開もすごくドキドキした。頭よくて精神的にも弱いわけでもないのに、なんやかんや快楽に流されてしまう受けが好きな私には絶妙だった。
一冊でコンパクトにまとまっていて良かったのだけれど、やはりもう少し続きが読みたかった。将孝と原田の今後が非常に気になる。