高名な美大の教授が逝き、残された年の離れた未亡人を、弔問に訪れた弟子筋の教員が自分のものとすべく挑む。これには、故人である教授の遺書ともいえる教員宛ての書簡に妻の後事を託す旨が記されていることが伏線となっており、それに導かれるように二人は肉体を重ねる。そして書簡には、未亡人の特徴的な性癖が付言されていた。それは・・・ネタバレ回避させて頂くが、亡くなった男よりはるかに若い未亡人が着物姿で、故人ゆかりの男と繋がる筋書は著者の鉄板の展開だが、本作はそれがマンネリに流れず、純、静、美といった長所的要素が色濃く感じられる良作である。亡き教授は書簡の中で告白する。「深雪は私の菩薩だった」・・・読者もまた、たおやかな女盛りのヒロインに観音菩薩のような慈悲の心をみるのである。