このレビューはネタバレを含みます▼
霧に沈むロンドン塔という舞台設定だけで、カーの狙いはすでに半ば成功している
怪奇趣味を前面に出さずとも、歴史の重層と空間の錯綜が自然に謎を深め、読み手の感覚をじわじわと攫っていく
派手な一撃よりも、些細な描写や会話の継ぎ目に潜ませた論理が効いてくるあたりは、まさに技巧派の面目躍如
フェル博士の奔放さが生む軽妙なユーモアも、重くなりがちな物語を心地よく中和しています
構造の把握には多少の忍耐を要するものの、その先に待つ解決篇の鮮やかさは十分な報酬👌
賛否を呼ぶ結末も含め理知と人間味が同時に残る、上質な本格ミステリ