絶筆「そうか、もう君はいないのか」に続いて、ずっと読みたかった一冊。推敲や編集を経ていない、著者の肉声を綴ったものだけに、最愛のbetter halfへの愛惜の情が全編からこぼれ落ちてきて、胸に迫る。
孤独と老いに苦しみながらも、最後まで真摯に創作に向き合う様は、これまで作者が認めてきた歴史小説の主人公たちと違わず、やはり誇り高き気骨ある日本人の一人であった。
肉親として、慟哭のような手記を繰ることを躊躇ってきた娘・紀子さんへ、「そうか、もう君は‥」と併せて、こうして一つの作品にしてくださったことに、心から感謝申し上げます。