このレビューはネタバレを含みます▼
社会が激変した明治という時代、変革を表面上受け入れつつも根本は変わらない平安時代から続く宮廷の“オク”のまったりした日常生活の四季が暖かい視点で描かれています。この後の大正、明治、平成と現在に至る過程で失われたものを考えつつ読み進めました。“オク”という小さな社会が宮廷社会を支える人材を育成していたことは作者の他の著書でも描かれていますが、こうした土台を失った先にある未来は自ずから明らかなのではないかと思いながら読了しました。いずれにせよ失われた美しい過去は一方でヒトの上にヒトが立つ残酷なまでに厳格な身分制度に基づくものであったことも描かれています。この本の美しい過去には裏面があることを忘れてはいけません。