本作は、かの「源氏物語」をモチーフにしており、文庫本で420ページを超える大作。主人公に「光」の字が、主人公の生母に「桐」の字が、継母に「藤」の字が当てられていることからもそのことがうかがえよう。後半部分のもう一人の主人公というべき、事故により両親を失い、養子縁組で主人公の妹となる「紫織」と主人公の近親相カンに至るまで「源氏~」の筋書きに忠実たらんとしていることがうかがえる反面、力が入りすぎたか、文芸作品とも性愛小説ともつかない宙ぶらりんの仕上がりとなってしまっているのが惜しまれる。かつ性描写が、物語の比較的早い段階からアブノーマルプレイに傾斜しており、読み手によっては拒否反応を示す向きもあるかも。また原作に沿っているため、登場人物の死も相俟って全編を暗い雰囲気が覆っている。一方、文章表現の流麗さはさすがで、そう言った部分も楽しめるため星三つでも良いかと思ったが、熟慮の末ふたつとした。