このレビューはネタバレを含みます▼
ひとりの作家の死をめぐる調査が、静かに、しかし確実に読者の思考を誘導していく構成が秀逸
複数の視点が交差することで物語に奥行きが生まれ、読み進めるほどに違和感が積み重なっていく感覚が心地よい
やがて明かされる仕掛けは、現代の読者にとって目新しさこそ薄れているかもしれないが、成立した時代を思えば、その先見性には素直に感嘆させられます
技巧に溺れすぎず、倒叙と心理の絡め方も端正で、ミステリとしての骨格は今なお堅牢
昭和初頭の空気感を味わいながら、「なぜ騙されたのか」を振り返る楽しみまで用意された一冊