このレビューはネタバレを含みます▼
石田衣良が描くのは、人生の足場を失いかけた人々が、それでもなお日常へと帰還しようとする静かな闘い
本作に並ぶ短編はどれも、喪失や挫折といった痛みを抱えながらも、決して絶望に沈まない絶妙な温度で紡がれている
派手なドラマに頼らず心のひだにそっと触れるような筆致に、感情をじわりと解きほぐされます
涙を誘うのに、その後味は不思議なほど穏やかで、読後には小さな灯りを胸に宿したような感覚が残る
人は孤独を抱えながらも、誰かとのつながりによって再び歩き出せる――そんな普遍的な真実を、過不足なく掬い上げた一冊
疲れた心にそっと寄り添い、前を向くきっかけを与えてくれる、優しさに満ちた短編集