このレビューはネタバレを含みます▼
リンカーン・ライム・シリーズから派生した本作は、「物証」ではなく「人間」を読むサスペンスとして、ディーヴァーの引き出しの多さを改めて証明する一作
キネシクス分析を武器にするキャサリン・ダンスと、他者の心理を支配する脱獄犯ペルの対決は、頭脳戦というよりも価値観と支配欲の衝突であり、その緊張感が物語を強く牽引する
カーメルやモントレーの自然描写が、逃走劇と心理戦に不穏な美しさを添え、舞台設定も印象深い
後半はディーヴァーらしい多段式どんでん返しが畳みかけるように展開し、予測をことごとく裏切ってくる
一方で、ダンスという人物の未完成さや迷いが物語に人間味を与え、完璧すぎない主人公像が好悪を分ける点も興味深い
本作はシリーズの変奏曲であり、ディーヴァー流サスペンスの別の顔を楽しめる意欲作