このレビューはネタバレを含みます▼
村の噂話から始まったはずの違和感が、「誰が本物か」「誰が殺したのか」「なぜ殺したのか」という三重の謎へと増殖していく構成は、カーの技巧がもっとも冴え渡る瞬間
タイタニック号沈没という実在の惨事を物語の芯に据えることで、荒唐無稽になりがちな設定に奇妙な現実味が宿っているのも印象深い
フェル博士は理屈屋でありながら過剰に鼻につかず、読者を置き去りにしない語り口が初心者にも優しい
自動人形や入れ替わりの趣向など、いかにもカー的な小道具は健在で、マニアには嬉しい仕掛けが連打される
翻訳の癖に引っかかる部分はあるものの、それを補って余りある物語の推進力があります
作り話にしか思えないのに、どこか本当にあったのでは‥と感じさせる余韻こそ、本作最大の魅力