HQのノベルの表紙の写真に、これ迄いつもどこか感性のズレを覚えたものだが、本作は二人の表情、ポーズ、モデルさんたちに、自然な雰囲気が出ているような気がして好感を持った。
彼に公私混同散見。買収の目的自体。ビジネストリップ先の一夜。最終場面も、えっそんな、時と場所を弁えずなのかと。
ヒロインに実力があったから彼女の価値がはね上がる構造のお話。
ストーリーの繰り出し方に無理がなく、面倒臭い饒舌感が無いから読み易い。
ただ、ハンサムという言葉を何回見せつけられた?
多過ぎる。却って、顔やスーツ姿以外の魅力も補強欲しかった。
目にする度に、釘付けにされ、魅力に囚われ、視覚嗅覚骨抜きで、ヒロイン我を忘れて。それだけ圧倒的だったと伝わってくるが、無礼極まりない見下されぶりと不愉快過ぎ暴言とが「いじめ」同然、それでも出勤するのが痛々しく思う。
HQコミック既読でも、心身弱ったヒロインを思うとここで腹立たしさは燻る。特に、彼女のことを見くびっていた彼が自分の先入観からの誤解を解くのが、ただ自分の腹の中で合点するのみで、ヒロインを痛め付け続けた前言への撤回を外に十分表し切ってない。名誉回復は職場の緑と私物持ち込み程度?。
性的魅力のみで何度も危うくのまれそうになり、二人はその抗いがたい生身の肉体が目の前にあることに、ついに陥落したように描写されている。
ヒロインたら頑張り屋さんなのに、こんないけすかないイヤな言い方してくるやつに陥落しちゃってあ~ぁと思ってしまう。
最後まで、「愛してる」のセリフを作者はとっておいて、ベッドインしても尚カラッとしているサバサバヒロインは納得出来る一方、叙述される彼の思考経路がいちいちムカムカした。
表現に凝っている訳ではなく、分かりやすい言葉選びされて、ストーリー展開の方を楽しませる趣向が、どうも普通に見えた。話の進行のみになってしまう。反発、警戒、でも魅力が発散されて関心がどうしても向かう、というロマンスはよくある型で意外性少ない。勢い、どう表現されてるか勝負。
ヒロインの仕事ぶり、かなりウェイトかけて表されていたが、彼の目から鱗は小気味いい。だがヒロインが彼のほうには肉体的魅力「のみ」で落ちた印象が、かなり残念な気持ち。提灯に釣り鐘読後感一杯。二人のかかわり度合いが、けっこうな偶然を排してもそれでも、深く際どく作りすぎとの印象。