小説は言葉遣いとか修飾表現に凝ったものと、話の筋に興味を引くものとタイプが分かれる。本書は文章がスパッスパッと小気味よくひと目で読ませて、スッキリした進み具合で話の行き先を楽しませてくれるタイプのもの。その構造が、短編的な、脇役目線の何編かをかませることによって更に複線化していて、3巻目最後の最後まで関心を引きつけてくる。
よく敵か味方か判らなかったり、味方と思ったら実は違っていたり、などといった二転三転話はあったりするが、本作はそうした読み手を裏切るタイプというよりも、タコがタコとは言い切れない、みたいな線。そこには、各キャラの人間ぽさが出ていて話の面白さを膨らます効果が。
麗乃がマインになって前向きになって強かに切り開いていく姿勢は、ひとつ未来人間が過去に戻って新しいものを伝える型を思わせるが、一方、遡った訳ではないところに作者の創作の世界が広がっていて、小出しに見せてくる不思議部分が今後の展開に、期待を繋げてくる。
ルッツが居てくれて良かったね、と、ずっと感じるが、読み進めると、その他のいろいろな出会いにも縁を感じてくる。もちろん家族という一番のベースのその居心地の素晴らしさも充分描かれていてイイのだが、他の登場人物達も盛り上げる盛り上げる。
勧善懲悪的な単純構造ではなしに、作家が造り上げた物語の中を慎重に大胆に探検していくかの印象。
第二部に行くのが胸ワクワクだ。
第五部迄全巻読了後追記。
ルッツの功績が話が長編化の過程で次第に相対的に過去のものに押しやられていくのが、少々割り切れない。