藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「叔母の時計」につきレビューします。ヒロインの亡き叔母の形見の腕時計が繋ぐ縁で出会った男。それは故人の思い人だったという設定。叔母も配偶者持ちであったが、甘酸っぱい大人の関係にも足を踏み入れていたことをヒロインは知らされる。であるが、文章には不倫につきまとう暗さは一切なく、分別を保ちつつ逢瀬を重ねる当事者ふたりに成熟した奥深さを見て、ある種の安心感をおぼえる。それでいてヒロインがプレイに入るや、描写は質・量ともに十分。大人になったヒロインが垣間見る大人の世界を背景に繰り広げられる濃密な性宴。楽しめます。