高嶺の花と思っていた美しい淑女が、ひょんなことをきっかけに手の届くところまで下りてきた。羽衣こそ出てこないが、相手の女性は伝説の天女さながらの天衣無縫ぶりで、熟女らしからぬ恥じらいとたおやかさをガテン系男との絡みのなかで表す。まさに殿方の夢。物語では実際に、未亡人になってもなお深窓の令嬢という設定で、主人公の男はある日を境に、女の身内により逢瀬を阻まれる。我慢して我慢して居場所を突き止め追いかけて、そして・・・。焦らされた果ての再会も男の欲心をくすぐる快作である。なお本書は表題作の他に、「大揺れエクス夕シー」なる短編も併録されているが、これはあっけらかんとしすぎでフィクション性が強い印象。以上勘案して星は三つ。