このレビューはネタバレを含みます▼
身内である警察官が犯した違法行為には全て目を瞑り、幼女殺人の犯人を追求する刑事の姿には興醒め。正義を追い求めるようでいて、証拠を捏造するような身内にはとことん甘く、正義の意味をはき違えた本末転倒ぶり。犯人のキャラクターも粗野な雰囲気を出すためとはいえ、ステレオタイプな暴言一辺倒で押し通そうとするあたり作者のそこの浅さが透けて見え幼女殺人という重いテーマにそぐわない軽々しさが残念。また、死刑を争うような重大犯罪なのに、弁護士や被疑者当人が決定的な証拠とされたシャツのクリーニングについて言及しなかったことも不自然極まりない。作品の核となる証拠品の謎、登場人物のキャラクター構成、ストーリー展開のどれをとっても乱歩賞まで取った作家としては力量不足感が否めない。