ネタバレ・感想あり明るい夜に出かけて(新潮文庫)のレビュー

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主人公の目を通して見る。
ネタバレ
2023年12月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人に触られることも、触ることも苦手な主人公、富山。
冒頭、それが原因でバイト先のコンビニでトラブルを起こしてしまう。
この時の、バイトリーダー鹿沢の対応が私としては印象が悪く、幸先が不安でしたが、登場人物が増えるにつれ面白くなっていきました。

変人な女子の佐古田や旧友の流川はラジオの熱心なリスナーだという共通項。

彼ら登場人物は、第一印象よりもずっとイイヤツでした。副店長ですら。
鹿沢も、最初のアレはなんだったのかと思うほど、そっと寄り添うことのできる優しい男でした。(若干悪趣味なところはあるけど)

この、印象の変化は、そのまま主人公の気付き、人を見る目の変化なのかなと思います。
ずっと主人公の一人称の視点で語られるので、物事をずっと彼の目を通して見ている感じで面白いです。

実在のラジオ番組が重要事項としてがっつり登場するのが本書の特徴。
私自身はラジオを聴く習慣もないし、その番組も知らないのだけど、主人公を通して番組やリスナーの熱量を感じることができました。

若い彼らは数年後どうなっているのかな。その後の彼らに想いを馳せたくなるお話でした。
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作家名: 佐藤多佳子
出版社: 新潮社
雑誌: 新潮文庫