藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書に収録の「鏡草」につきレビューします。主人公は高校を卒業してすぐ結婚した美貌の人妻。京都を舞台に、かつて自分の教師だった男との道ならぬ恋が展開する。結婚後もなお身持ちの悪い夫に見切りをつけ、自分から教師にコンタクトし、宿泊先のホテルまでついていき、誘惑する。プレイ描写も教師の立場を気にして積極的になれない男に、女が猛然と仕掛けていくほどのタフネスを見せる。若いながらも欲望をむき出しにする主人公の性豪ぶりがテンポよく描かれ小気味よい。一方で肛門愛撫はないが、ストーリーの流れや、どこか清純さを残す十代の主人公の性格を勘案すれば、むしろその内容で良いことが一読しておわかりいただけるだろう。特筆すべきは、ほぼ全編を通じて男女のお互いに対する愛情が溢れ、美しく仕上がっていること。とはいえ、他の著者の作品を読んでおらずアンソロジー一冊に対する評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。