登場人物は食品メーカーの社長と、その部下の嫁。嫁と言っても、物語の設定では、社長の部下に当たるヒロインの夫は早世しており、社長がその寡婦を自分のものにするというスジ。花好きなヒロインに自宅の庭を見せるという名目で呼び寄せ、行為に及ぶ。しかし、作中では倒錯や際立って派手なプレイは出てこない。至ってノーマルな責めを、和服、紫式部の花といったガジェットを絡ませて積み重ね、耽美で妖しい短編に仕上げている。非常に美しく、それでいてしっかりと工口い世界に読者をいざなう本作は藍川京氏の真骨頂というべきもので、百戦錬磨を自負するやなぎやこもうならされた。唯一の難点は、カバーイラストで、作中のプレイを忠実になぞる姿態を描いているが、人物の顔立ちがヒロイン悠香子とちょっとちがうような気がする。