ずっと好き、社会的成功者になる前から好きだった、という私の好きなパターンの話。
でもこの話、ヒロインの好き好きアピールが強すぎて、諦めようVSでも無理、の振り子の間で揺れる心情に同調し辛かった。
「ニコのこととなると私はあっという間に都合のいい女性になってしまう」のところなんて、物凄く分かるけれど、ループに入り込んだ様を正視できない気持ちにさせられる。当人がやめられないにしても、傍目にはもうやめた方がと、身近なら苦しそうな当事者につい言いたくなる展開。
そこをHQだから、初恋成就をやってくれる。
ヒロインも諦めようとしても、彼の中に自分への関心があるのを感じちゃうから、キッパリっていうケジメがつけられないよね。特に、「それならずっと欲しがってくれ」なんて彼の無自覚殺し文句、あ~あ、断ち切れないヒロインの想いには、それは余りに罪作り過ぎる台詞で、読んでて思わずここで一旦目を閉じてしまった。確かに思い続けるのは怖いんだろう。更に畳み掛けるニコ、悪魔の誘惑だ。
「あなたは私にほんのちょっとの勝利感も与えてはくれないのね」には、状況とセリフの感覚は理解可能でも、「勝利」の語感に応援しにくくなった。
あと、パスタを投げる行為にも、覚悟の一方通行愛を健気に続けた姿と被らない様に思えて、相手の事情を一切聞かずに彼の愛を乞う自中の姿に少し白けてしまった。
頑なにヒロインに自分は結婚を考えてないと、「率直」な気持ちを伝えて釘を差すことに、甘言で目の前の女を誑かさない、ずるくはない彼のキャラがある。どう結末に決着させるか、読んでいる最中は二人の軌跡への興味は強く引っ張られた。
この頁数で、ローマでのナニー生活がかなりの比重ということにストーリー進行のダレを感じ、SOS発信は素直に良かったが、なんだか安易な展開という印象も。
凝った表現方法があり、目先の面白さでリズミカルに読ませる。章分けも、極短い体言止め?もキャッチーかと。。
「そこにあるのは混乱とからみあう二つの肉体」、「ニコに恋をしている自分以外の誰かになれなかった」、「服を脱ぐんだ。君を隅々まで見たい」、ストーリー中のシチュエーションと言葉がとても合ってると感じた。
結婚式シーンが長すぎるのは、永すぎた春への終止符といった効果を割り引いても、私はここも冗長と感じた。