このレビューはネタバレを含みます▼
ディクスン・カーの処女作『夜歩く』は、完成度以上に作家の野心そのものが濃密に刻み込まれた一冊
人狼伝説や猟奇趣味、エロティシズムをまとった幻想的な夜のパリは、理屈よりも感覚に訴えかける力を持ち、読み手を否応なく引きずり込む
肝心の不可能犯罪の解決は粗削りで、後年の傑作群と比べれば首をかしげたくなる部分も少なくない
しかし、その未熟さこそが、カーという作家の方向性と執念を鮮明に映し出しています
理性と怪奇の綱引き、そして最後に残るほのかな哀感――それらが奇妙な余韻となり、なぜか忘れがたい読後感を生む
傑作とは言い難いが、カーを読む意味を確かに教えてくれる“始まりの書”