子ども達のお話に見えるけれど登場人物の人間関係には、子どものそれとは言えない絡み合ったものがあり、縦と横とに広がる利害の絡む思惑や、利害を超越した親愛とか敬愛とか、個々の性格に根ざす行動や思考回路、いろいろな角度で楽しめる趣向。そうした番外編的なものを豊富に蓄えた構成にも、全然内容に手を抜いていないのが素晴らしいのに、本編ではしっかりと、時にワクワク、時にしんみり、主人公の濃密な日々が主人公本位で描写されて、実に楽しめる(別人視点の話も面白い)。物語世界ではローゼマインは「考えなし」とされているが、他の人には理解できない頭の回転力の早さと、彼女の工夫が加わった元の世界の知識や感覚を応用することで周りが得られるものの大きさ、情勢判断の的確さ賢察ぶり、読んでいて気持ちがいい。
あまりにも大容量の合冊版故に、あとがきで毎度言及される各巻内イラストや表紙の解説を読んでからもう一度振り返りたくてもなかなか該当箇所に辿り着けず、諦めてしまうのが残念な所。
オルドナンツに関しては、いつから借りずに自分のでやれるようになったのが、読み過ごしてしまったようだ。速読タイプではないため地道に日々読み進めたのに思い出せず残念。
フェルディナンドとのやりとりは第三部終盤から愈々作者の意図的(に小さいがこの、第四部に期待を繋げる)着火を感じたので益々目が離せ無くなりつつあったところ、この第四部に至って、彼の一身上の変化にまつわるローゼマインの心情描写に両者の揺るぎない信頼感を読ませていただいて深層のうちの進展ぶりの表面化みたいなものを堪能した。
魔力、魔方陣、魔術具、魔石、いろいろな小道具が効いていて、読んでいて実に楽しい。