すみもりさい先生の作品の素晴らしさは流れるような描写であり、自然でごく現実的にファンタジーが展開する点だと思う。戦闘中に長々とセリフで説明してみたりといった現実感を損なうようなことはけしてなく、ストレス無く読み続けることができる。
この作品は設定に悲壮な部分はあるが、ことさらそれを強調しようとはしていないバランス感覚もさすがである。そのため綺麗な物語の範疇に収まっている。過激描写連発の悲劇みたいな衝撃だけ押しつけてくる稚拙な作品とはレベルが違う。
ただ、個人的には明るい話のほうが好きなので、先生の作品のなかでというならそんなに好みなほうではない。ただ、少し暗いけど美しい物語というところ。好みじゃないのにストレス無く読める作品というところがすごいんですが。復讐要素が嫌いじゃない人ならたぶん間違いなく傑作だと思う。