このレビューはネタバレを含みます▼
現代日本人の女性、絵里が小公子の世界の少女エリーに転生。小公子の主人公であるセドリックの可愛らしさに悶えつつ、現代知識を活かしてセドリックを立派に育てていくお話…らしいんですが、色々とツッコミ所が多くて物語に集中できません。
冒頭、絵里がトラックに轢かれる→病気で瀕死状態のエリーの精神体に出会う…という流れ。絵里は、エリーを救うために私はここにいる!原書小公子が光ったのはその合図だったんだ!などと唐突に悟りますが、読者の私にはそこに至るまでに原書小公子が光ったなどという描写を読んだ記憶がありません。読み落としがあったのかと何度も最初から見返してみてもやっぱりそんな描写はナシ。そもそもトラックに轢かれた際、原書小公子を持っていた描写はないし、鞄に入れていた本が衝撃で飛び出してきたなんてこともナシ。実は光っていたのを絵里は見ていた、とかならちゃんと読者に教えてください。察しろなんて無理があります。
しかも先述の通り、絵里はエリーを救うためにここにいるなどと語りつつも、セドリックの原作とは違う少し頼りない性格を前に、そんな彼を支えるために私は転生したのでは、と言い出します。いや、ちょっと前にエリーを救うためとか言ってたのはどこにいった。作者さんの言いたいことはわかるけど、読者としては少しずつ積み上げていた設定をやっぱこっちでと急に差し替えられた感がしてもやもや。
さらに酷いことに、"原作にはない、アニメで設定されているセドリックの特技フルート演奏"がしれっと出てきます。別にアニメの設定を出すのが悪いと言っているのではありません。原書小公子が光ったなら、そこは原作設定の世界ではないのか。イギリス生まれのアメリカ人原作者の世界に何故日本人が作ったアニメの設定が混ざるのか。説明も特にないので世界設定の根幹部分がめちゃくちゃです。
街には貴族のお辞儀(カーテシー)を知る人はいないと本人が言っているのに、何故か絵里は周到に練習していてほぼ完璧にできます。元現代日本人女性が指導者もなしにどうやってマスターするのか。
まだまだ矛盾や世界観の破綻が多すぎて、もはやストーリー云々の感想がでてきません。この小説は原作読了済み前提なんでしょうが、絵里が悶えているだけで原作キャラの魅力が伝わってきません。
これほどツッコミ所の多い小説は初めてです。もう矛盾を見つけるのが楽しくなるほどでした。