人妻の不倫ネタ。表題の凌霄花のほかに松葉菊、黄揚羽、杜鵑など、作品冒頭を様々な動植物が彩り華やかな出だしである。藍川ワールドに慣れ親しんだ読者にとっては一種安心の「ルーティン」。だけど旧函館区公会堂で出会った男とのやり取りまでは流石にToo muchだわ。会話の中身も一方が若い女たちにしてはイケてないし。無理して書かなくてもいいんよ。紙面稼ぎの寸劇とは言い過ぎか。さて、その男は時を隔ててヒロインのお相手を務めるわけだが、性描写はゆったり、かといって間延びせず、プレイの叙述は適度な濃度を保ったまま進んでいく。開戦に至る前奏部分をいま少し圧縮できればかなりの佳品となったかも。評価3.4999…。四捨五入して星3つ。さほどふしだらとも思えないヒロインが浮気に走ったのは男の言葉どおり、ダンナや過去の男たちが揃いも揃って下手クソばかりだったからか。なお、本作はコスミック文庫から刊行された短編集「艶文」に収録されており、重複買いに注意である。