このレビューはネタバレを含みます▼
冒頭の『甘くてからい』に続く『濃くておもい』。
血の繋がりは無くても家族として支え合って生きてきた蒼太・ヒロ・アオの三人の物語をズバリと言い当てたような出だしに思わずThumbs up。
変わらないと思っていた三人の関係性。ある日変化が訪れ、好むと好まざるとに関わらず変化に向き合うことになったヒロ。やがて蒼太とアオの二人を繋ぎとめようとするばかりではなく、自分自身を受け入れ見つめるべきであることに気づく。
これまで見て見ぬふりをしてきた生まれ故郷であるハワイの記憶とそこにいる母や祖母への感情の清算をすべくハワイのヒロの街に向かう。"ヒロコ”から"ヒロ”への意識のシフトが必要で「確固たる自分」を取り戻した様には胸がスカッ。三人がそれぞれ明るい未来を予感させる締め括りは、ハッピーエンド好きの自分にはたまらず新酒のワインで杯を重ねたくなりました。
タイトルの『つぎはぐ、さんかく』の三角は、蒼太とヒロが営む惣菜店の店名「さんかく」であり、蒼太・ヒロ・アオの関係であり、蒼太・アオ・彼らの父親の黒宮慎司の関係、ヒロ・祖母・母の関係にも思えて様々な意味が込められているようにも感じました。
文中の『母はお気に入りの食器にひび割れを見つけたように一時顔を歪めて』というような心に残る表現が独特でセンスがキラリと光り素敵です。歯切れ良い文章で読み易いところも素晴らしいです。
先生の今後の作品も読んでみたいと思いました。
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