自分なりの配慮というものは、時として相手にとっては傲慢にすぎず、些細なきっかけ一つで簡単に関係性に誤解や歪みを生むものだという人間の心理を上手く利用した文学作品に近い物語です。
なのでライトノベルのような軽いものを好まれる方は回れ右です。(ラノベを悪く言っているわけではありません)
会話や行動で緻密に計算された心理描写や文章がとても読み応えがあり、登場人物それぞれにおそらく誰しもが抱くであろう表面からみた印象と内面の違いを上手く描いてあるなと思います。
冒頭の方でヒロインが「巻き込んだのは貴方がたであって、私は巻き込まれただけ」という趣旨の発言をします。
同じ状況でもそれぞれの立場でそれを捉えられる印象は180度変わるのだと衝撃でした。
私達がいかに自分本位な思い込みと印象とで相手を決めつけているか、まざまざと反省させられました。
人はどうしても自分本位に都合のいいように物事を捉えて行動します。会話をすること。伝えること。きちんと相手と向き合うこと。その為に行動すること。簡単なようでそれはとても難しく、そしてとても大事なことだなって改めて考えさせられました。
ただ最初に言ったように、ラノベにカテゴライズするには小難しいのと、個人的には終盤のヒロインとヒーローの心の機微や2人のわだかまりが解ける過程をもう少し丁寧に描いて欲しかった。