このレビューはネタバレを含みます▼
高度成長の名残をとどめる団地と、その傍らに横たわる濁った水面‥そこに暮らす人びとは、人生の折り返し地点で抱えきれなくなった感情を、静かに持て余している
介護や離婚、かつての恋といったありふれた現実を入口にしながら、人が自ら選び取ってしまう“ほの暗い衝動”を容赦なく照射する本作
どの物語も決して甘くはないのに、不思議と読後に残るのは冷たい絶望ではなく、微かな体温
連作という形式が生むゆるやかな連関が、町そのものをひとつの生命体のように息づかせる
闇を描きながら、その奥でかすかに明滅する光を見逃さない——人生の陰影に思い当たる節のある読者ほど、深く刺さる一冊