主人公の彫刻家は過去に愛する女性を失い、その桎梏を抱えながら作品を世に生み出し続けている。そして出品作がある老人の目に留まり・・・ここから藍川ワールドのはじまり。老人の正体、連れの美熟女の素性、二人の来歴は問うまい。それがワールド住人のお作法なり。この著作、相手熟女の描き方に特に力が入っている。著者の小説で数えきれないほど使われている「ねっとり」という形容がまさにふさわしく、成熟した女の色香が体臭とともに、己が鼻まで実際に届いてきそうな臨場感を醸す。しかし、である。何か足りない。ああそうか。老人が自分の女(妻?愛人?)を差し出す動機がいまひとつ不明。ここは描いてほしかった。迷ったすえに星は2つとした。