このレビューはネタバレを含みます▼
陰鬱な因縁を背負った「黒死荘」という舞台装置からして、本作はカーター・ディクスンの密室美学が最初から全開
心霊実験という怪奇色の濃い導入は、読み手をあえて超自然の迷宮へ誘い込み、そこから冷徹な論理へと引き戻すための巧妙な助走にほかならない
初登場となるヘンリー・メルヴェール卿は、常識と非常識の境界を踏み越えながら真相に迫り、その存在感は十分
人物たちの動機は錯綜し、狂気と理性が入り混じる様は、人間の暗部をじわりと照らし出す
一方で密室トリックは古典的発想ゆえにやや強引に映る部分も‥
それでもなお、怪奇と論理のせめぎ合いをここまでスリリングに成立させた点に、本作が代表作と呼ばれる理由がある