このレビューはネタバレを含みます▼
宮沢賢治の言葉を導線に据えながら、高校生たちの揺らぐ心を丁寧に掬い上げていく一冊
物語の核にあるのは、失踪した先輩の謎というよりも、「善意」と「幸福」の距離をめぐる静かな問いかけ‥
誰かを思って差し出した行為が、必ずしも望んだ形で届かない――その現実を見据えつつも、人が他者を想うこと自体の尊さを手放さない姿勢が印象的です
読み進めるほどに登場人物たちの内面がじんわりと立ち上がり、やがて自分自身の価値観にも小さな揺さぶりをかけてくる
宮沢作品と響き合う構造も巧みで、読書体験そのものを豊かに拡張してくれます
派手さはないが、読み終えたあとに静かな余韻が長く残る、誠実であたたかな青春小説