エンターテインメント性と回顧性を持ち合わせた、とても読み応えのある作品。
本作を知るきっかけは、野田彩子先生がコミカライズされた作品を読んだことによるもの。まだ連載中の作品だがどうしても続きが気になり原作を購読。良い読書体験になった。
「自分語り」と言うと、否定的な意味合いで使用されることのある言葉だけれど、本作においては主人公が「自分語り」をすることで、実感を伴った経験がクイズと交錯する場面がいくつも描かれる。それにより、物語はよりリアルなものに仕立てられている。実際、作中のクイズと答えは実在のもので、「日和山」は自身の知識をアップデートするに至った。
私の師の言葉を思い出す。絵描きは記憶力。見たものを描くために覚えるという意味ではなく、その時の記憶とともにどれくらい鮮明に思い起こせるかといった、記憶の引き出しへのしまい方。
いつどこで何をしていた時のこと(クイズにおいては得た知識)なのか、吸収するために勉強したものと違って、自身の思い出とともに手繰り寄せると紐付いてくるものは、自身の血肉となっているため強いのだ。
作中のクイズの答えが導かれるさまは、まさに主人公三島玲央の血肉になっているからこそで、物語のミステリー部分である、本庄絆の0文字押しへの疑念へのアンサー部分にもなっていて、中盤それが判明していくところに、地道に正確に論理的に答えを導き出してきた三島玲央らしさがあり、彼の真摯な生き方に温かい気持ちになった。
もちろん物語はそれだけでは終わらない。生き方の違い、捉え方の違いで棲み分けがあるとわかるクイズ界。気軽にテレビ放送でクイズを楽しむ程度の自分でも、その奥深さに感慨を覚えた。
これは映像化してもきっと面白いだろうな、と思いながら読んでいたら、来月映画が公開されるそうで。
キャストを見て、配役を想像する。うわーいいな!と思った。