このレビューはネタバレを含みます▼
真夏の陽光が降り注ぐリゾート島という、一見すると事件とは無縁に思える開放的な舞台で幕を開ける本作
しかしその明るさこそが、人間の嫉妬や猜疑心といった“影”をいっそう際立たせていきます
誰もが被害者に複雑な感情を抱き、しかも全員に抜かりないアリバイが存在するという状況の中で、ポアロは些細な違和感を丹念に拾い上げていく――その過程は派手さよりも論理の積み重ねで読ませる、実に端正なミステリーの醍醐味に満ちている
奇抜な仕掛けに頼らず、「思い込み」という人間心理の盲点を巧みに突く構成は、再読であってもなお新たな発見をもたらすはず‥
新訳によって会話や人物描写の機微も際立ち、閉ざされた共同体の空気感がより生々しく立ち上がります
華やかな白昼の風景の裏で静かに進行していた真相が結びつく瞬間の鮮やかさは、シリーズの中でも印象深い一冊