このレビューはネタバレを含みます▼
探偵でありながら、帰る場所そのものを見失ってしまった語り手が、世界各地を渡り歩く連作短編集
物語は謎解きの快感よりも、土地ごとに異なる空気や人との距離感をすくい取ることに重心が置かれている
現実と想像の境目が曖昧なまま進んでいくため、読み手もまた足場の定まらない感覚を共有することに‥
帰れないという状況は単なる境遇ではなく、「どこへ戻りたいのか」という記憶や感情の揺らぎを浮かび上がらせる
明確な結論に収束しない構成ながら、その曖昧さが読後にじんわりと残る
旅の記録のようでいて、自己の輪郭を探る内面的な物語でもある一冊です