このレビューはネタバレを含みます▼
「謎の来訪者」といういかにも事件の匂いを漂わせる導入でありながら、本作の核心はあくまで“家庭の内部”にある
サスペンスの皮をまとわせつつ、実際にはごく私的で、しかし普遍的な揺らぎ――家族それぞれが抱える言えなさ――を丁寧にすくい上げていく
語られる秘密は劇的というより、むしろ日常の延長線にある小さな歪みであり、それゆえに足元にじわりと迫る現実味を帯びる
起伏の穏やかさに肩透かしを覚えるかもしれないが、その分、人物の内面に寄り添う筆致には確かな厚みがあります
終盤の収束はやや整いすぎの感も否めないものの、「ふつう」とは何かという問いを柔らかく、しかし確実に突きつけてくる
派手さではなく、静かな共感と余韻で読ませる一作