わたせせいぞうが得意とする都会派ロマンを凝縮した一編
透明感ある色彩と洗練された人物造形は、ページをめくるたびに80年代の空気を鮮やかに呼び起こします
物語自体はシンプルでありながら、登場人物たちの恋愛や人生観にほろ苦い陰影が差し込み、単なる軽やかな恋物語にとどまらない余韻を残す
時に理想化された人間像は今日の視点からは時代性を強く感じさせるものの、それこそが作品の魅力でもあり、当時の読者が夢見た世界を象徴しています
筋立てよりも「雰囲気」を味わうための漫画という印象で、わたせせいぞうの美学をもっとも純粋に体感できる一作として今なお独自の存在感を放っている