養父母の与え続けた愛無き虚構の家庭環境の中、ヒロインは実の父母に会うことを心の支えに今日まで生きてきた。
生みの母親に会えなかったヒロイン、夢に見てた父との再会劇を罵倒の場にされたヒロイン。それでも、まだ見ぬ家族に会いたくて訪ねて来て、やっと家族に、そして、妹弟たちとの触れ合いの機会が得られた。
薄幸のヒロインがこれからは、今までの不幸を全て幸福にひっくり返して生きていけるだろうと、読み手の私が希望を持って本を閉じることが出来たのは、彼の、ヒロインの本当の顔を見抜ける力。見抜けるのは、良き理解者になれる素質があるということ。
お互い相手が本来居るべきと思う所と、己の状況とから、踏み込めずにいたけれど、ゾーイが一歩さらけ出せて良かったと思う。あとは、これまでの家庭的に望めなかったものを全て手にして欲しい。
余談になるが、私が十代の頃、アメリカは十代の妊娠の多さが日本とは何桁も違っていたレポートを読んだことがある。
そして、男性は基本的に逃げてしまい、未婚の母となってしまうことが(中絶を容易に出来ない)多いとあった。
HQでは、ステップファミリーが、良い親も悪い親もどちらもあって、この種の問題の根深さを思わせる。
ゾーイを内面に住まわせるゆえに一貫しないヒロインの言動。彼は見事に御せると信じているが。両親からの精神的攻撃の深刻さ。養女にもらわれていった背景をヒロインが知ってしまうと共に不安定さのピークが来ており、この大きな波のさなかに壊れてしまわないか懸念した。お酒で済んだ(?)ことが、むしろ不思議なほど、この話には爆弾が沢山潜んでいて、結末のヒロインの切り返しの余裕に彼がヒロインを強いと正反対に思ってしまわないか、多少の気がかりは残った。