端的に言えばうまくない。アダムのシニカルさは表現できているけれど少々やりすぎてHQならではの甘さやトキメキが不十分な気がします。アダムは、自分自身の生い立ちの厳しさから一身独立した孤高の人。だから、会社が窮地に立っているのにキロランの行動がのんびり構えているように見えてかなり辛辣に振舞っています。そんな展開の中でも、若い時のキロランを思い出すなり、今のキロランの容姿に見とれるなりのコマが存在することによって、P72の「16年前から知っている・・・」のセリフが生きるのであって、これらが無い事で恩を受けた男の娘なのに弄び、後ろ足で砂をかけるような行動に見えます。恩があったから会社の立て直しに無償で尽力したという行動と真反対という事。おかしいです。また、いきなり記憶が無くなる展開は、彼の行動を見つめ直し、一からやり直すことを筋立てた事象なのに、不安や蘇った記憶の絶望感と高揚感がまるで描かれていません。これでは、読み手には何が起こっているのか理解できません。この事象を以ってキロランにも会社経営に前向きになったことは伝わりますが、2人の間の物思いが無くてシラケます。