好きになった人には恋人が?、会社を理不尽にやめさせられた彼女は大体において逞しい人間だが、恋ではやはり傷つく一人の女性。
ヒロインの強さと、愛を知って揺れる心が描かれる。彼は素敵に描かれていて、馬の相乗りシーンは読んでいて私も背中に熱を感じる感覚をヒロイン気分で読んだ。
自然の描写も大変繊細で、日の光も感じとれ、色のないモノクロのコマに、鮮やかなグリーンと、射し込む光線を見るようだった。
ヒロインがしっかりしている分余計に彼、コナーは少々フラッとしているように見えてしまうし、ヒロインの感情を思ってくれても、と思うのだけれど、そこは彼の計算高さのない良さなのかもしれない。
自分の努力で生活を好転させてきたヒロインの賢さと決断力、行動力に、今日から自分ももう少し志を強くしようと思わせられた。特に、セクハラに堂々とやり返す強さ、そこには、上司のずる賢さの上を行くしたたかさ、泣き寝入りするどころか、譬え多額であろうとポケットマネーなぞで穏便に済まそうとした、女好きの相手に一歩も退かないのだ。小気味いい。
法的手段にでも訴えることを辞さずに、侵害された権利をきっちり取り返し自分の名誉も確保して、次の求職活動に支障ないようにも手を打つ・・・完膚なきまでに相手の非を公然とさせた勝利、なんという手腕!これができずに、いかに多くの女性が泣き寝入りで職場を去っていることか!実に小気味のいい解決で、ヒロインの凄さが出ている。
そもそも、中米駐在で成果を出せていること自体、ヒロインが優秀な証なのだがー
主体的に人生を切り開くヒロインが同時にもつ、ロメロ氏への優しさ、遺志を受け生前の計画を完遂する人間力がよかったと思う。
甘い恋人描写が巧みな分、その類のシーン多くて、読み場所は考えなくてはならないが、短い間に燃え上がった恋愛描写は場面に充分溢れている。
信じてもらえなかったあとの、彼がもう少しヒロインに礼を尽くして詫びて欲しい気分は少し残ったし、誤解を招くような言動に弁解はあっても、そもそもあれはない、という反省は欲しい。
しかし、誤解がとけなかったのは、遺言書き換えのタイミングのこともあり、仕方がなかったと思えば、ヒロインの純に個人の遺志を継ぐ行為の気高さゆえに誤解が解けたとも言えるのだから、それも受け入れられる決着方法だった。
コスタりカに行ってみたい気持ちにさせられた。