「秘書は完璧な花嫁候補」ー私は秋元先生の描かれる男子のちょっと赤面正面顔が好きで、作品中出会えて良い。
秘書が、有能でイケメンのボスに密かに恋、という定番もの。しかも、契約結婚という輪をかけて、HQの結局幸せ結婚に結び付く先が見える筋立て。そのありきたりさを、ところどころ目新しさがつなぐ。それも、こんなに素敵だったんだ、と、変身まで付いてくる。これで何処によさがあるかと言えば、ヒロインの想いが報われる事への、深い安堵感だろう。好きになればあばたもエクボとは言わないが、彼は、ヒロインとの愛や、親友の遺児の親権問題なかりせば、顔とお金だけの残念な人間だった、ということになってしまう。
読み直しを重ねるうちに、星5つにすることにした。
「秘密のサンタクロース」ー姉妹でシリーズを成す、コミカライズ担当作家違いの作品のひとつ。牧あけみ先生が姉妹編「キャンドルを消す前に」を担当。
人は表だけ見ていては解らない姿がある。本当の姿を見せるまではとらえどころがないメインキャラを通して、すぐさらけ出すということはなかなか出来ない、人と知り合うことの本質的な性質が見える。
「閉ざされた記憶」ー記憶喪失のビフォア・アフター、過去が見えない中で突如現れたこの人と私とは?、というヒロインの不安感が、少しずつ彼への信頼の醸成、甘さの出てくる進展で拭われていく。
その過程もよく描かれているのだが、記憶喪失となってしまうその前にも、甘い時があったことが見えて、甘さを完全に取り戻して、素敵な人で良かったね、と、心からホッとするのだ。
記憶喪失となって、夫が名乗り出るストーリーも、HQあるあるの設定だが、二人の関係描写は、ロマンスコミックの名手として、秋元先生の絵の面目躍如で嬉しい。
三作品とも初読み時点では4と感じたが、いずれもほとんど5に近く「秘密のサンタクロース」<「閉ざされた記憶」<「秘書は完璧な花嫁候補」のつもり。その上下もあまり意味はない。HQの中で粒よりと思う。
いつも背景や小道具にも手抜き感のない細やかな絵で、人物の後ろが白っぽくないのが素晴らしい。