双方の心情を読者には見せて、成行きを見届ける趣向。この原作者のお話に多いのは、最後まで読者に心情を明らかにしない手法で語られる男性。本作はダダ漏れ描写。いずれにせよ、男性の心情をヒロインが解らずにいる形。
よくヒロインは、ここぞというとき行動していて、読んでいてそこはとても気持ちがいい。悉く読みすぎ考えすぎで噛み合わない。うまくいかないときは致命傷になりかねないのに、HQには約束されたゴールがあるから、やきもきさせておいて収束する。
作者の手の内で転がされてる感があからさまに全編にあって、少し私は天の邪鬼になる。作られた早合点や、遠慮がちな思考の応酬が私には、じれったさを強制されているような、面倒臭い両者の上っすべりにストレスがいつの間にか溜まる。このスレ違い、結婚後は解消されることを祈る。
継母と義姉達が母と義父に置き換わったが、シンデレラコンプレックスを読み手に疑似解脱体験させて、今の、日常の奴隷であるかのような日々から新しい世界へ飛ぶ気持ちをお話世界で昇華出来る。資格と自立という現代要素入れつつ、ヒロインの本当の意味での幸福を考えてアドバイスする彼リトリクは、相手のことを最大限伸ばす良き理解者といったところ。オランダ人に見える。
この話は、二人のロマンス以外に別のストレスがかかってくる。最後まで、ヒロインの貢献が、世話になった当事者からの評価される場面無いままであること。読み手の私には割り切れなさが残る。兄弟姉妹がいたら、余計イラッと来たことだろう。更に結婚式に参加者として無邪気に喜ばせて。そんなもんだが、現実も。
彼は、外堀支援でもどかしいが、駆けつけたり申し出したり時間を作ってくれたり、この中で、どうして?とか、そこまでしてもらうのはおかしいとか、そんな突っ込んだ会話もなされないままに流される不思議さも、そっちの方が、却って厚かましい気がする。
それまでの遠巻きの関係から、間を詰めるプロセスに、たとえ勢いというものがあったとしても、慎重と控えめを地で行った二人には違和感。追い詰められてやっとさらけ出すシーンとしても、その舞台がわざわざそのときそこなの?との気持ち。物語の骨格が、典型的なスレ違いの、同じようなところでいつまでもグルグルといった停滞感を、吹き飛ばすだけに用意されたと思えるのだ。こうして欲しかったんでしょう、の言葉もジャンプ感。