もう一度振り向いて。 きれいになった自分を見直して欲しい。 そうしたら、こちらから捨てるから。
気持ちは大変わかるけれど、未練とはそういうものですよね。なかなか乗り越えられない過去の傷。それは、まだ気持ちがあるから。薄れてもまだ残っているから。
そして、時間が経っているのに、名前を聞けば、姿を見れば、そして、電話の声。離れられない。もっとそばにいたいと願ってしまう。
ヒロインの苦しい記憶と、なんとか忘れようと生きてきた九年間、決して簡単ではなかったことは、その仕事に全くヒロインは関わりたくなかった様子で歴然。
彼が自分に夢中になってくれた。この事実だけで済ますことはできなかった。小林先生の描かれる男性は、そんな悪い男に見えない。何があったんだろうとは思う。
そして、当時のことを聞き出すリスクを冒すヒロイン。聞かずにはおれない、でも、そんな話に関心を寄せるほどに勘づかれ易くなる。折角あの頃とは全く別人になれていたのに。
HQは、初恋の成就も多くて、そこも私を惹き付けるのだが、このストーリーも、長年の想いが、結局叶うという、私好みの、失恋がひっくり返る展開。
金太郎飴でも構わない。
私は、この、昔から好きだった人と年月はかかったけれども、ついにはハッピーに、というのが心の栄養剤。
顔の作りが人形のように綺麗で、細そうな奏でる様な指で、射通すかの眼差しにドキッとする、洗練された雰囲気の男性が出てくる小林先生のコミックは、その、私の好きなパターンで力を発揮してくれる。
いかにも、だが、偶然はそれにしてもちょっと多すぎた気がする。